よろしくお願いします。
「ぼけますからよろしくお願いします。」新潮社 信友直子 2018年に映画化された作品を 2019年秋に書籍にした信友直子さん。 85歳で認知症と診断された母、支える93歳の父のことを 映像作家である直子さんが それ以前の両親の生活とともに認知症と診断された人の心の機微をも詳しく書き連ねた本。 2012年ころから 「ひょっとして??」と思うことが多くなってきたらしいが 2015年のお正月に「今年の目標は?」の問いに対して 「人に迷惑をかけない年寄りになりたいです」とニコニコして言い、2017年には 「ぼけますからよろしくお願いします」と。 このお母さんの言葉をそのまま本の題にしたのだという。 これまで認知症になったら何もわからないかと思われていたが そうではなくて 本人自身も「自分は何かおかしい」などと自覚したり「迷惑かけるから死んだ方がまし」と思ってみたり そうかと思うと ほんの少し前に訪れてきた人と話しこんだことをすっかり忘れていたり(それどころか 訪れてきたことも忘れていたり・・) 両親は広島県在住、一方 直子さんは仕事の拠点を東京においていて「仕事が恋人」というほど夢中で 仕事をしている女性。 一人娘の直子さんに「心配せんでもええ。あんたはあんたの仕事をした方がええわい」と たまに帰省すると そう言ってくれたお父さん、この言葉は東京で大学生活を送ることになって直子さんが親元を離れるときからずっと一貫して言ってくれていたそう・・・ 自分の不安を「私、頭おかしゅうなっとるようなんよ。馬鹿になったんじゃわ」などと口にするお母さんに対して 「誰でも年とりゃあ、おかしくなるわいの」と励ますお父さん、直子さんが何度も書いている通り とても穏やかなお父さんのよう・・・ それまで家事など一切したことのなかったお父さんが 食事のこと、買い物、洗濯、掃除ゴミの分別、そして縫物などをこなし でも一切愚痴もこなさず毎日を淡々とこなしている。 この本を読んで 認知症と診断された人の心の中を知ることができたが それよりも 家族の絆というか、夫婦の絆、親子の愛などについて 深く考えさせられた。 あるきっかけにより テレビ局から「この夫婦の日常をテレビで流したい」との依頼があり [両親の許可を得なければ…」と恐る恐る切り出した直子