「島へ免許を取りに行く」


図書館で借りようと思った本がなくて 本棚を見ながら戻ろうとした時に見つけたのがこの本。
ノンフィクションライターの星野博美さんの本.作
彼女のことは知らなかった。

40歳を過ぎてから 車の免許をとろうとした話。
私も40歳を過ぎてから 免許を取りに行き、 大変苦労したので 読み進むうち 教官に同じように叱られ 仮免へ行くまで 延長、延長の苦労をするところで 昔を思い出し あっという間に読み進んだ。

星野さんは何か日常を変えたい、と思って一大決心をし 車の免許をとろうと、まず教習所探しから始まる。
ネットでいろいろ調べ 厩舎があり 馬と触れ合うことが出来るとのふれこみに魅かれ 五島列島の合宿免許を選ぶ。
東京ではあまり人付き合いをしていなかったようだが 同じように教習を受けに来ている人や先生、馬担当の人などと 上手に心を通わせ 検定試験に合格してからも 島を離れるのが悲しくなるくらい 島の人と仲良くなり島全体に惚れてしまった星野さん。
ただの 免許取得苦労話ではなくて なかなか面白かった。

“みきわめ” までなかなか到達できずに落ち込んで  「膠着した日常にほんの少し風穴を開けたかっただけなのに・・・・・やはりあきらめた方がよいのだろうか・・・」  と先生の前で大泣きしてしまった時に 先生が「人はそれぞれ個性が違うのだから焦る必要はない、コツがつかめたら ウソみたいに楽になる。簡単に習得してしまった人は 案外免許を取ってから苦労することが多い。最初に苦労した人は 後できっといいドライバーになる

この話で だいぶ吹っ切れたそう。

ここの先生たちは漁業をしながら 教官をしている人も多いらしく 長期滞在になった星野さんを家にまで招いて新鮮な魚や貝をごちそうしてくれている、すごいなぁ~

おまけに東京に戻って車を運転しだしてからも 教習所に質問して  教えてもらっている。
その問いと答えにこんなのがあった。

   いつまでも運転がうまくならず 「へたくそ」と言われ続けています

   運転を形容する言葉は「安全」と「危険」であって「上手」「下手」ではない。
    めざすべきは安全な運転であって 上手な運転ではない。
    運転技術の向上を目指す必要はない。


私も星野さんと同様 落ちこぼれて「もうやめようか…」と真剣に悩んだ。
これまでの人生で最も叱られてばかりの日々だった。
「どこ見とるンや~!」とか  一時停止を忘れた時には「わしを殺す気か~?」などとどなられた。
路上ではない、教習所で、である。

星野さんの本にも同じような場面で「殺す気か?」と言われたようで ひょっとしたら これは教習所教官のマニュアルにあるセリフ??なのかな~

「どうして免許など取りに来たのか?」と後悔もした。
免許を取りに行くまでは 自分がこんなにもどんくさいとは思っていなかった。
でも 毎回家族に様子を知らせ うまくいかなくて叱られてばかり・・ということを話してもいたし 当時高校生と中学生の子供の手前、やりかけたことを 「途中でやめる」ということは親として 言いにくかった。
最初にたしか20万円近く払ったし・・・・・・

同じ時期に教習所に入った近所の同年代の人は先生に叱られてばかりの毎日に耐えられなく まだ2段階か3段階の時に 免許取得をあきらめた。

あのころまだオートマチックが出だしたところで 免許教習はマニュアル車だった。
とにかくギアチェンジで 時間を費やした。

仮免も本免も一度で合格したけれど 「免許証をもらっても 実際に運転するかどうかは その後じっくり考えよう、自分だけでなく 他の人の命もかかっているのだから・・・」と 思いながら試験を受けた。

しかし 運転しだしてから 27年たった。 
電信柱にぶつかったり 駐車場で角をこすったりしたこともあるが ゴールド免許。
運転するようになったら やはり「世界は広がった」という感がして 喜びを感じた。
運転は決して上手ではないけれど 2時間くらいなら まだ高速道路も走る。

しかし 週一度 近所の人を4人乗せて(つまり満杯) 体育館へリズム体操に行きながら いつになったら 「乗せるのに不安があるので もう行かない」と言おうか このごろしきりに考える。
運転の時に限らず 集中力が無くなっているのを実感することが多いので・・・



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