人付き合い
このところ 小説は女性作家さんの作品ばかり読んでいるような気がしている。
角田光代さんは 心理描写が素晴らしく 「八日目の蝉」 「月と雷」 「三面記事小説」 「明日はうんと遠くへ行こう」など どれをとってもあっという間に読んでしまい 読後 満足感がある。ただ、いつも思うのは この作者の穏やかな話し方とお顔からは想像できない鋭い描写には「作家さんの想像力と創造力は 無限にあるのかしら」ということ。
この「対岸の彼女」は 図書館で以前から探していたが見つからなかった。古い本なので閲覧室の書棚に入りきらず書庫に置いてあったのを 出してきてもらった。2003年作で相当貸し出し数が多かったようだし 書庫ではギュウギュウ詰めの状態だったのか 背表紙が少し歪んでいる。 直木賞受賞作だったらしい。 そのころ私は角田さんの本を読んでいなかったのだと思う。
小夜子は うまく人との関係がとれず 子育て中だが娘の公園デビューにもつまづく。一方小夜子と同年齢の葵は 大学卒業後会社を立ち上げ 社長として働いる。その二人を対岸にいるように表現している。
私自身、子どものころからあまり友人との関係がうまくとれない、というか 初対面でもさっと親しげに話しかける友人や従姉たちをうらやましい思いで見ているところがありそれがコンプレックスに感じてもいた。 年齢を重ねるにつれて「それも個性、仲良くなったら誠実に付き合っているからそれでいいや」と思えるようになってきたが 小夜子が葵の会社で働くようになって 知らず知らずのうちに 人との関係もうまくとれるようになっていくのを読み進み「そう、そう いろいろ経験すると変わっていけるものだよね」と 納得しながら読んでいた。
小夜子の部分と 葵の学生時代の部分が 章に分かれて交代で書かれていて 読みながらちょっと「?」と思うところもあったが 人と人との関係は ちょっとした行き違いで誤解を生み こじれたり また逆に親密になったり・・・・いろいろあるよね。
葵には今の明るい葵からは全く想像できない過去があり、 誰もが相手の過去の苦しみや悩みなどには気付かず 表面的なつきあいをしてしまっていることが往々にしてあるのだろう。
小夜子が「人間はどうして年齢を重ねるか」という問いに対して「出会いを選ぶため」という答えを見つける。すごい表現!いろいろな出会いを通して人間は成長し 変わっていけること!と解釈できるのかな。
出会いと別れを繰り返し 前に進んでいき 生きていくことに希望を見出そうとさせてくれるラストシーン。いつもながら上手にまとめている。
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