血のつながり
一週間足らずに
5歳の女の子が食べ物を与えられずやせ細って亡くなり、「ごめんなさい。こんどからはきちんとやります」などとメモが残っていた…
見ず知らずの女性を車に閉じ込め 殺し 死体を遺棄・・・・
「だれでもよかった」と 新幹線内で凶器を振り回し三人を死傷させた男‥‥
いじめを苦に自殺する小中学生の話もたびたびある。
また 相変わらずオレオレ詐欺のような振り込め詐欺も全国各地であとを絶たない
どうも世の中がとんでもない方向に進んでいるような気がしてならない。
やはり見本を示さなければならない大人が 口先だけだったり 嘘をついたりしていることも影響しているのではないのか?
カンヌ映画祭で最高のパルムドール賞の栄冠を得た映画「万引き家族」を見た。
ここから下はネタバレになるので 映画を見るつもりの方はご遠慮ください
これまでも是枝監督の映画は 子役の演技のすばらしさが際立っているが 今回も
ふたりの子供が走っている映像を見て 「うわー !!」と思った。
走っている映像に感動するなんて‥なかなかないこと。
是枝監督は どのようにして子役を選ぶのだろうか。
もちろん 演技指導をするのだろうが 誰でもこのように演技できるわけではないはず。
9歳の男の子(しょうた)はともかく 5歳(?)の女の子(ゆり)のあの微妙な表情は!!すばらしい。
安藤サクラさんもすばらしかったが 子役の二人のあの演技は この映画の質をより高めていた、と言える。
法律的には罪と言える様々な出来事があり 決してこれを肯定するわけではないが 子どもの貧困、虐待、世の中の矛盾など いまの時代を反映、象徴していて 警告をしているのでは…
全く血がつながっていないこの家族の様々な過去は 物語の最後の方で明かされるが
★ごみごみとして散らかっている室内
★近所で虐待されていた女の子(ゆり)を連れてきてその子のおねしょの後始末をする場面
★下着姿でソーメンをすする夫婦
★隅田川花火大会の夜、全員が空を見上げて音だけを聞いている場面(ビルの間に建っている狭い平屋なので音は聞こえるが花火は全く見えない)
そういう映像一つ一つが 決して豊かではないが なんとなくほんわかとした場面に感じられるのが不思議。
年金をあてにされていて居候している樹木希林さん演じる老女が ポツンと 「血がつながっていないから よけいな期待をしないからいいのかも・・」と。
数か月後にゆりに捜索願が出されていることがわかるが ゆりの「ここにいたい」という希望で 髪の毛を切りこれまで着ていた洋服を燃やしてしまう。
母親役の安藤サクラが ゆりをぎゅっと抱きしめて燃えている服を眺めているシーンが
私は好き。
前にバケツがありその中でユリの洋服が燃えている |
しょうたは ゆりと一緒に万引きしているときに 「妹にはさせるな」と 駄菓子屋店主に忠告され、自分もやめようと わざと見つかるように大きな音をたて商品を棚から引きずりおろし 警察に補導されることになる。
捜索され 全員が取り調べられる。
安藤サクラがが尋問され、泣く場面、
是枝監督によると あの場面は 検察官役に 【紙に書いた質問を見せその質問を声にださせ、自由に演じてもらった】ということだが サクラが涙を流し左手で顔を拭き、右手で涙をぬぐい、また左手で…ポロポロと・・・・・
あの場面は カンヌ映画祭の時に海外の有名女優が「あの泣き方は・・まねさせてほしい」と言ったりとか、是枝監督の助監督が 「自分はあの場面に立ち会えただけで幸せだった・・」と言っていたとか。
施設に入って 学校へ通うことができるようになったしょうたが 最後に父親のもとに来て同じ布団で寝た後 バスで別れて行ってしまう場面、走り去るバスを追いかける父親、ふりかえりもしないしょうた、 あのシーンは胸が熱くなる。
受賞後に是枝監督は 「自分はベネチア映画祭で発見され、カンヌ映画祭で育ててもらった」と言っているが 映画祭に行くと言語を超えて「独りじゃない、つながっている」と豊かな気持ちになるのだとか。
文部科学相が 祝意を伝えたいとの意向を示したら 「公権力と距離を保つ」と辞退したらしい。
是枝監督らしい。
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